「芸者」のルーツは「遊女」!?~後編 「芸妓」と「娼妓」~
遊女はすべての「女性接客業」の源流
前編はこちら
目次
「芸妓」=「遊女」=「芸者」
「芸妓」と言う言葉が誕生したのは
関東で1600年中頃
関西~全国で認知されたのが
1700年中頃です。
ここで疑問が生まれたかと思います。
「元々遊女がやっていた事はお座敷遊び」
つまり
「遊女=芸妓(芸者)」です。
ならば
「遊女」を「芸妓」と呼ぶ必要がないのでは?と
その通りです。
事実、吉原に流れてきた禿は
遊廓デビューを迎えるまでの間
物の読み書きから、
高度な舞いや詩などを教え込まれます。
その姿はさながら芸妓そのもの
なのに、今
改めて「芸妓」と呼ぶ意味は何か?
答えは1つです
似て非なる
「芸妓」と「何か」を分けたかったから。
そしてその「何か」とは
他ならぬ「娼妓」でした。
芸妓と娼妓の業務の違い
ここで2つの職業の業務について紹介します。
芸妓さんについてはご存じかと思います。
宴席で余興や舞踏をします。
空いている時間はお客様のお酌をします。
最新の舞踏や鳴り物を日々学び
また高度な演目にも対応できるのも
芸妓さんの特徴です。
娼妓さんも宴席での簡単なお座敷遊びなら出来ます。
違うのはお客様と床に着くことも出来ると言う所です。
芸妓さんは芸事に特化し
娼妓さんは接客に秀でていました。
余談 床入りの誤解
床入りと聞くと性行為と繋げがちですが。
当時は財政的な理由や寿命の短さ。
江戸に至っては人口の比率が圧倒的に男性優位な時代。
独身のまま一生を終える男性などザラでした。
彼らからしたら
女性と話をすることも食事をすることも
共に横になり赤裸々に語り合うことも
至福の時間だったでしょう。
床入りした全ての男性が性行為に手を染めた訳ではありません。
両方とも「遊女」
両方とも宴席を盛り上げる役割に変わりはありませんし。
それぞれの専門分野も
広く言えば
前編で言ったとおり
「共に遊びに興じてくれる女性」=「遊女」なのです。
さらに洋服が日本で広まるまで。
同じ着物を身に纏っていたのですから
同じ値段で同じサービスが出来る。
この2つの業種は
常にお互いの目の敵になっていました。
大抵のお客様は
両方と遊べるほどの財政力は持ち合わせていませんからね。
芸妓さん側が未だに
「身体は売らない」と釘を刺すのも
こう言った経緯があるからです。
ちなみに吉原では
宴会は芸妓さんが盛り上げ。
夜は娼妓さんが寄り添うと言う
共存が上手く出来ていました。
余談 「フジヤマ、ゲイシャ」の語源
一説では外国人の
「寿司、天ぷら、フジヤマ、ゲイシャ」
の「ゲイシャ」は
「芸妓(芸者)」さんでは無く
「娼妓(遊女)」さんだったと言います。
何故なら
芸妓さんは近年まで
「一見さんお断り」を貫いていました。
つい最近になり
観光客用に少し敷居が低くなりましたが
それでも殆どは未だに
「一見さんお断り」なのです。
現代でさえその様子なのです。
日本の作法も分からない外国人が
敷居の高いお座敷に
簡単に上がれる訳がありません。
明治に入り
ダムなどの日本のインフラ整備を整える為に
外国から派遣された
「お抱え外国人」の手記に娼妓さんについて言及しています。
当時は日本中に遊廓があり。
特に横浜は外国人の為に作った遊廓があります。
似て非なる容姿とサービスを提供する。
「芸妓」と「娼妓」
現代もアジア人の顔の判別が出来ない外国人には
どちらも「ゲイシャ」に見えても可笑しくありません。
明治
明治に入ると
「マリアルーズ号事件」
「芸娼妓解放令」が起こり
両者の扱いの差がハッキリ分かれます。
詳しい経緯は後日紹介しますが
簡単に言えば
- 芸妓さん
当時の政治家が会合するときは
必ず料亭で行うのがステータスとなり
芸妓さんは彼らの相手をする。
- 娼妓さん
政府から奴隷のレッテルを貼られ
この頃から「かわいそう」と世間に扱われる。
外国の人権団体の日本支部から目を付けられると散々。
この価値観が終戦まで続きます。
遊廓消滅~現在
売春法により
遊廓は消え、遊女(娼妓)は歴史から消えます。
それにより
働く場所を失った女性たちの雇用を守るために
あの手この手で法を交わしつつ
これまでの経験が活かせる職種を用意しました。
ナイトクラブ、キャバレー、ストリップ
特殊浴場などから始まり
時代のニーズに合わせて
キャバクラ、ソープランド(トルコ風呂)などに派生、変化し
現代の水商売、風俗、接客業へと続きます。
まとめ
現在ある女性接客業は
すべて派生して生まれたものです。
そしてその螺旋の中央にいるのが
他でもない「遊女」なのです。
時を超え、
時代に合わせて業種が変わっても
おもてなしの心は1000年前から何も変わりません。
当事者の方は
そのお仕事に誇りを持っていただき。
周りは
遊女と言う言葉の意味を
今一度考え改めて頂ければと思います。
執筆後記
あなたも遊女
わたしも遊女
みーんな遊女
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません